2008年6月21日土曜日

代理一般の過去問

「代理一般」の過去問いってみよう。93条ただし書きの類推適用はわかったようであやふや。復代理はおおむね理解しているが、ちょっと聞き方を変えた引っかけ問題にはやられそうだ。注意。
この部分は、6月13日までにやった部分。ちょうどよい復習になったかな。
  • 甲は、乙に家屋を購入する代理権を与え、乙は、丙との間で、甲のためにすることを示して特定の家屋の購入契約を締結したが、実はその家屋は丁所有のものであった。丙が自己の責めに帰すべき事由により、その契約を履行することができない場合でも、乙が契約の当時その家屋が丙の所有でないことを知っていたときには、甲は、丙に対して損害賠償を請求することができない。(57-3-1)
× 権利の全部が他人に属する他人物売買では、善意の買主は「解除」と「損害賠償請求」、悪意の買主は「解除」できる。ただし、相手方に帰責自由がある場合は、本人や代理人の悪意又は有過失を問わず、債務不履行責任を問うことができる(§415)。本問では相手方丙の責めに帰すべき事由によって丙の債務が履行不能となっているので、債務不履行責任の追及として損害賠償を請求できる。
  • 甲は、乙に家屋を購入する代理権を与え、乙は、丙との間で、甲のためにすることを示して特定の家屋の購入契約を締結したが、実はその家屋は丁所有のものであった。丙が自己の責めに帰すことができない事由によりその契約を履行することができない場合でも、甲及び乙共に契約の当時その家屋が丙の所有でないことを知らなかったときには、甲は、丙に対して損害賠償を請求することができる。(57-3-4)
○ 丙に帰責事由がないので債務不履行責任は問題とならない。権利の全部が他人に属する他人物売買においては、善意の買主は「解除」と「損害賠償請求」、悪意の買主は「解除」できる。本問では、甲及び乙が善意であり、契約の解除も損害賠償請求もできる。
  • 委任による代理人が復代理人を選任する場合において、代理人は、本人の許諾を得て復代理人を選任した場合でも、その選任及び監督について本人に対して責任を負う。(4-2-エ)
○ 条文通り。(§104、105Ⅰ)
復代理における任意・法定代理人の責任
・任意代理→①通常(§105Ⅰ)※本人の許諾またはやむを得ない事由を要する=選任、監督の責任
        ②本人の指名に従った場合(§105Ⅱ)=不適任・不誠実を知って本人に通知しない場合又は解任することを怠った場合の責任・解任懈怠責任
・法定代理→①通常(§106)=全責任。
        ②やむを得ない事由があった場合(§106ただし書)=選任、監督の責任
  • Aの代理人Bの代理行為が相手方Cとの通謀虚偽表示に基づくものであった場合において、Aがそのことを知らなかったときは、Cは、Aに対しその行為について無効を主張することができない。(9-2-オ)
× 代理人と相手方との間の通謀虚偽表示が本人を欺くことを目的とするものである場合には、§93ただし書き(心裡留保)を類推適用し、本人が相手方の真意を知り(悪意)、又は知ることができた(有過失)のでなければ、つまり本人が善意無過失であれば、当該行為は有効となる(大判昭14.12.6)。本問におきかえると、本人Aが相手方の「心裡留保」に善意であり当該行為は有効であるため、相手方Cが本人Aに対して代理行為の無効を主張することはできないはずである。しかし、本問では代理人Bと相手方Cとの間の通謀虚偽表示が本人を欺くことを目的とするものであるとは明示されていないためこの判例を適用できず、原則に立ち返り、通謀虚偽表示は無効であり、その代理人の行為の効果は本人に帰属するため、CはAに無効主張できないとはいいきれない。
→微妙な肢だが、この問題では他の肢との消去法で回答できた。これ以上は深入りしない方針でいった方がよさそうだ。
  • Aは、Bの代理人として、Cとの間で金銭消費貸借契約及びB所有の甲土地に抵当権を設定する旨の契約を締結した。Aが借入金を着服する意図でCとの間で本契約を締結し、Cから受領した借入金を費消したが、CもAの意図を知っていた場合、設定した抵当権は無効である。(12-3-3)
○ 代理人が自己の利益を図るために権限内の行為をした場合の法律行為は原則有効。ただし、代理人の権限濫用につき相手方が悪意又は有過失のときは、93条ただし書きを類推適用し、本人は無効を主張できる(最判昭42.4.20)
  • Aは、Bを利用して、Cと売買契約を締結し、甲動産を取得しようとしている。BがAの代理人である場合、甲動産の購入に際し、Bには意思能力がある必要はないが、Aには行為能力がある必要がある。(16-5-ウ)
× 代理人は自ら代理行為を行うので、Bには行為能力がなくてもよいが意思能力は必要である。本人Aについては、代理人が法律行為を行うため、意思能力・行為能力ともに不要である。
  • Aは、Bを利用して、Cと売買契約を締結し、甲動産を取得しようとしている。BがAの使者である場合、甲動産の購入に際し、Bには意思能力がある必要はないが、Aには行為能力がある必要がある。(16-5-ウ)
× 使者は本人の意思を伝達する期間に過ぎないため、Bは行為能力・意思能力ともに不要。したがって、本人Aには、意思能力・行為能力ともに必要である。
  • Bの妻Aは、Bの実印を無断で使用して、Aを代理人とする旨のB名義の委任状を作成した上で、Bの代理人としてB所有の土地をCに売却した。この場合、Aに売却の権限がなかったことにつきCが善意無過失であったときは、Cは、当該土地の所有権を取得することができる。(18-4-エ)
× 代理権限踰越の表見代理(§110)を有効とするためには、①基本代理権が存在すること②代理人がその権限外の代理行為をしたこと③相手方が善意・無過失であること--を要する。本問では基本代理権の有無が問題となるが、「夫婦の一方が日常家事の範囲を超えて第三者と法律行為をした場合、第三者においてその行為が日常家事に関する法律行為であると信ずるにつき正当な理由があるときに限り保護する(最判昭44.12.18)」。土地の売却は日常家事に関する法律行為の範囲内に属するとはいえず、また、そう信じるにつき正当な理由があったとは問題文から読み取れないため、相手方Cは土地所有権を取得できない。
  • 代理人が復代理人を選任する行為は、代理人の代理行為の一環として行われるものですから、代理人は、復代理人を選任する際、本人のためにすることを示して行う必要がある。(19-5-ア)
× 復代理人は代理人の名において選任される。復代理とは、代理人が自分の権限内の行為を行わせるために自己の名でさらに代理人を選任し、本人を代理させることであるため。
  • 代理人Bは復代理人Cを解任することができるが、復代理人Cが本人Aの許諾を得て選任されたものである場合には、本人Aの同意がなければ、代理人Bは、復代理人Cを解任することができない。(19-5-エ)
× 復代理人は代理人によって選任され、代理人には、任意代理では選任・監督責任、法定代理では全責任が課せられる。したがって、たとえ復代理人が本人の許諾を得て選任されたものであっても、本人の同意の有無を問わず、代理人は、復代理人を解任することができる。

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