2008年6月29日日曜日

過去問(占有一般)

占有一般の過去問の復習。
  • 占有権の譲渡は、占有の目的物に対する外形的な支配の移転によってのみ効力を生ずる。(63-15-5)
× 占有権の譲渡の態様は①現実の引渡し②簡易の引渡し③占有改定④指図による占有移転--の4通り。外形的な支配の移転がない②③④でも占有権の譲渡の効力が生じる。
※ 占有改定は公示方法として4つの中で最も不完全→質権設定(§344)、即時取得(§192)など、要物性を強く要求するものには不適用。
  • 意思無能力者は、法定代理人によって物の占有を取得することができるが、物を自ら所持することによっては、その占有を取得することができない。(1-6-1)
○ 自己占有の成立要件は①所持すること②自己のためにする意思があること。意思無能力者は自ら物を所持しても占有を取得できない。ただし、法定代理人を通じて取得することはできる。
  • 土地の所有者が死亡して相続が開始した場合、相続人が当該不動産が相続財産に属することを知らないときでも、自主占有を取得する。(3-2-5)
○ 相続人は、相続財産を現実に支配するに至ったか否かに関係なく、被相続人が有していた(観念的)占有権を承継する(最判昭44.10.30)。本来、占有は目的物の事実的支配を基礎として成立するものだが、この判例のように解さなければ、相続人が支配財産を現実に支配していない場合に、相続人が占有回収の訴えを提起できないなどの不都合な結果を生じるため。
  • 悪意の占有者は、占有物が滅失したときは、その滅失が自己の責めに帰すべからざる事由によるものであっても、回復者に対し、損害の全部を賠償する義務を負う。(14-11-エ)
× 悪意の占有者であっても、過失責任の原則により、占有物の滅失につき帰責事由がないときは、回復者に対し、損害賠償義務を負わない。
参考:§191「占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。」
つまり……
・善意・自主占有→現存利益の賠償
・善意・他主占有→損害の全部
・悪意・→→→→→損害の全部
  • Bは、Aからパソコンを詐取し、これをCに売り渡した。Cが詐取の事実を知っていたときは、Aは、Cに対し、占有回収の訴えによってパソコンの返還を請求することができる。(15-9-ウ)
× 占有回収の訴えは、占有を侵奪された場合にのみできる。詐取、横領、遺失により占有を失った場合には、できない。本問では、そもそもBに対しても占有回収の訴えができず、Cに対してできるはずがない。
※占有回収の訴えの相手方(被告)となりうる者は?
 ①侵奪者(詐取、横領、遺失は対象外)
 ②侵奪者からの包括承継人
 ③侵奪者からの悪意の特定承継人
→侵奪者からの善意の特定承継人に訴えることはできない。したがって、本問でBがAからパソコンを「盗んだ」場合でも、Cが盗品だと知っていたときは、AはCに対して、占有回収の訴えができる。
→本問がBがAからパソコンを「盗んだ」場合で、Cが盗品だと知らなかったのであれば、AはCに対して、占有回収の訴えができない。
  • Aは、Bに預けていた壺の返還を求めていたが、Bが言を左右にして返還に応じなかったので、Bの自宅に無断で入り、壺を取り戻したところ、Bから占有回収の訴えを提起された。Aはこの訴訟において、抗弁として、壺の所有権が自分にあると主張することはできない。(15-9-エ)
○ §202Ⅰ「占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。」Ⅱ「占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。」 そもそも抗弁とは、原告の主張に理由が無いことを主張するためにするものであり、原告が①占有権の存在 ②被告が占有侵害をしている事実--を主張しているのに対し、防御方法として所有権の主張はできない。なお、本権に基づく反訴を提起することはできるうーん、我ながら理由付けが怪しい。民訴がしっかり理解できていないのがばれるな。民訴がもう少しきっちり分かったら、こっそり理由付けを書き直します。
  • Aの自宅の隣接地にあった大木が落雷を受け、Aの自宅の庭に倒れ込んだため、Aは、庭に停車していた車を有料駐車場に停めざるを得なかった。この場合、Aは、当該隣接地の所有者であるBに対し、占有保持の訴えにより大木の撤去を請求することができるが、損害賠償を請求することはできない。(15-9-オ)
× 占有保持の訴え(§198)は、妨害の停止及び損害賠償ができる。このうち、妨害の停止の請求については、妨害者の故意・過失は不要である。一方、損害賠償については、妨害者の故意・過失を要する(大判昭9.10.19)。この損害賠償請求は、不法行為に基づく損害賠償請求としての性質も有するため。本問では、Bの故意・過失に基づく侵害とはいえないため、妨害停止の請求はできるが、損害賠償請求はできない。
※占有訴権の請求内容
・占有保持の訴え=妨害の停止及び損害賠償(例外は上記の通り)
・占有保全の訴え=妨害の予防又は損害賠償の担保
・占有回収の訴え=物の返還及び損害賠償
※占有訴権の行使期間(おまけ)
・占有保持の訴え=妨害の存する間、妨害の止んだ後1年以内(工事着手から1年経過及び工事完成後は不可)
・占有保全の訴え=妨害の危険の存する間(工事着手から1年経過及び工事完成後は不可)
・占有回収の訴え=侵奪から1年以内。

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