さしあたって、民法総則で残っていた「時効」の過去問いってみよう。(BGM:リュミエール(村治佳織))
今回で、民法総則の過去問は終了。物権もちゃっちゃかちゃっちゃか進めよう。
- 被保佐人が保佐人の同意を得ないで債務の承認をした場合であっても、時効の中断の効力を生ずる。(61-4-1)
○ §156「時効の中断の効力を生ずべき承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力又は権限があることを要しない。」との条文通り。なお、管理能力・権限は必要だが、被保佐人は管理能力を有するため、保佐人の同意を得ることなく、単独で債務の承認をすることができ、それにより時効中断の効力が生じる。
- 夫婦の一方が他の一方に対して有する債権の消滅時効は、婚姻解消の時から進行を始める。(61-4-5)
× 夫婦の間の債権は、時効が停止しているだけで時効が中断しているわけではない。したがって、婚姻解消後6カ月以内は時効は完成しない(§156)だけであり、そのときから新たに時効が進行するわけではない。
※時効の停止のまとめ(§158~161)
①未成年者・成年被後見人の法定代理人が不在→既能力者又は法定代理人就任から6カ月間停止
②未成年者・成年被後見人が法定代理人に対して債権を持っている→既能力者又は後任者就任から6カ月間停止
③夫婦の一方が他方に債権を持っている→婚姻解消から6カ月間停止
④相続が生じた→相続人が確定し管理人選任・破産宣告開始の審判の確定から6カ月間停止
⑤天災・事変が起こった→止みたるときから2週間停止
- 主たる債務について消滅時効が完成した場合には、主たる債務者が時効の援用をしないときでも、その連帯保証人は、主たる債務につき時効を援用することができる。(元-2-1)
○ 時効の援用権者は「時効によって直接利益を受ける者及びその承継人」に拡張されている。連帯保証人もこれに含まれる(大判昭7.6.21)。
- 主たる債務者がなした時効利益の放棄は、保証人に対しても効力を生ずるので、保証人は、時効を援用することができない。(5-3-ア)
× 時効利益の放棄は、時効の援用と同様に相対的に効力を生じ、主債務者が放棄しても保証人には効力は生じない。したがって、「時効によって直接利益を受ける者及びその承継人」にあたる保証人は時効を援用することができる。
- 期限の定めのない貸金債権の消滅時効は、金銭消費貸借契約が成立したときから進行する。(16-7-ア)
× 期限の定めのない金銭消費貸借契約による貸金債権は、相当な期間を定めて催告した場合はこの期間の満了時から、催告がない場合は金銭消費貸借契約が成立してから相当の期間を経過し時から消滅時効が進行する。
※「期限の定めのない」まで読んだところで、「消滅時効の起算点は債権成立時から進行」と早とちりしてしまった。「消費貸借」は「相当期間」がキーワードと肝に銘ずること。
- 債権者不覚知を原因とする弁済供託をした場合には、供託者が供託金取戻請求権を行使する法律上の障害は、供託の時から存在しないから、その消滅時効は、供託の時から進行する。(16-7-オ)
× 弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効は、供託者が免責の効果を受ける必要が消滅したときから進行する(最判平13.11.27)。免責の効果を受ける必要がある間は、供託者に取戻請求権の行使を期待することができないため。
- 確定期限のある債権の消滅時効は、当該期限が到来したときから進行するが、不確定期限のある債権の消滅時効は、当該期限が到来したことを債権者が知ったときから進行する。(18-7-ア)
× 確定期限の「ある」債権も、「不」確定期限のある債権も、消滅時効の起算点は期限到来時である。せっかく覚えても、とっさに「履行遅滞の起算点」とごっちゃになっていては世話はない。
- 地上権及び永小作権は、時効によって取得することができるが、地役権は、時効によって取得することができない。(18-7-イ)
× いずれも時効取得できる。なお、「地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる(§283)」。
- 所有権に基づく妨害排除請求権は、時効によって消滅しないが、占有保持の訴えは、妨害が消滅したときから1年を経過した場合には提起することができない。(18-7-ウ)
○ 所有権は消滅時効にかからない。また、「占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。」(§201Ⅰ)
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