ちなみに、過去問集でのカテゴリーは「所有権一般」だけど、肢別に怪しかったもののほとんどが所有権以外の権利に関するものばかり。まっとうに所有権自体の性質を聞いてくることは考えづらいが、他の権利との比較で怪しくならないようにしよう。
- 甲所有のA土地に隣接するB土地の所有者乙がB土地を丙に譲渡した。この場合において、乙がA土地について通行地役権を有していた場合においても、その登記がなされていないときには、丙は、B土地につき乙から所有権移転の登記を受けたとしても、甲に対して、通行地役権を主張することができない。(59-11-3)
× 承役地の所有者であった者及びその一般承継人に対し要役地の所有権移転を対抗し得るときには、地役権の移転も登記なくして対抗し得る。(大判大13.3.17)
- 建物の賃借人甲がその所有者乙の同意を得てベランダを作り付けたときには、そのベランダの所有権は、甲に帰属する。(59-12-3)
× ベランダは建物に付合する。(§242「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。」)242条ただし書きの通り、本問では賃借人甲が自己の権原にによって付合させているが、ただし書きが適用されるためには、「付合物が不動産と一体化して構成部分になるのではなく、独立の存在でなければならない(最判昭38.5.31)」。ベランダは建物と一体化してもはや独立の存在とはいえず、賃借人甲は所有権を留保することはできない。
- 共有物を分割しない旨の特約は、動産についてはすることができない。(1-4-2)
× 「第256条①各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。②前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。」256条1項ただし書きでは不分割特約の対象となる「共有物」を特に絞っておらず、不動産に限るわけではない。
- 不動産については、留置権は成立しない。(1-4-3)
× 「第295条①他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。②前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。」→§295Ⅰは「物に関して生じた債権」としており、不動産についても動産についても留置権は成立する。
- 不動産質権は、登記をしなければ効力を生じない。(1-4-4)
× 不動産質権において、登記は対抗要件であるが、効力要件ではない。
※不動産質権の効力要件と対抗要件
・効力要件=①質権設定の合意②質物の引渡し(占有改定は含まず)。
・対抗要件=登記。(占有を喪失しても、登記があれば対抗できる。)
- 抵当権の目的は、不動産に限られない。(1-4-5)
○ 抵当権の目的となるのは①不動産(土地、建物、登記された立木)②地上権③永小作権④工場財団。いずれも、登記によって公示することができ、抵当権の目的とすることができる。
- A所有の建物甲及び建物乙が、その間の隔壁を除去する等の工事によって、一棟の建物丙となった場合には、建物甲の所有権は、建物丙のうちの建物甲の価格の割合に応じた持ち分となり、Aは、この持分上に抵当権を設定することができる。(15-10-オ)
× 同一所有者間の建物甲と建物乙が一棟の建物丙となった場合には、一物一権主義により、1個の所有権が成立する。持分というものを概念することができず、その持分上に抵当権を設定することもできない。
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