2008年7月6日日曜日

平成20年度本試験の問7の復習

この悔しさを忘れるまい。
今夜は、入手したてほやほや「平成20年度本試験」の問7の復習だけはやっておこう。予備校(LEC)の速報だと、答えは「3(イエの組み合わせ)」。一方、私が選んだのは「4(イオ)」。エ、オの肢で迷って、はまってしまったようだ。気弱マークを付けたアと合わせて3肢(ア、エ、オ)をチェックしよう。

まずは、肢に入る前の問題文を見てみる。
「時効の援用権者に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合わせは、後記1から5までのうちどれか。なお、民法第423条による援用権の代位行使については考慮しないものとする。」
試験会場では、この「なお~」から後を読んで頭が真っ白になったんだよな。

(債権者代位権)
第423条
1. 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
2. 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。

何のことはない、債権者代位のことを言ってたんだな。出題者に機先を制されてしまった。何、冷静に見ればびびることは何もないじゃないか。
それでは、肢に行こう。
  • 後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権が消滅すると先順位抵当権も消滅し、その把握する担保価値が増大するので、その被担保債権の消滅時効を援用することができる。(20-7-ア)
× §145「時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」→この「当事者」は、判例で「時効によって直接利益を受ける者及びその承継人」に拡張されている。しかし、後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できない(最判平11.10.21)。
「先順位抵当権の被担保債権が消滅すると、後順位抵当権者の抵当権の順位が上昇し、これによって被担保債権に対する配当額が増加することがあり得るが、この配当額の増加に対する期待は、抵当権の順位の上昇によってもたらされる反射的な利益に過ぎないと言うべきである。そうすると、後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅により直接利益を受ける者に該当するものではなく、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができないものと解するのが相当である。」
「(抵当不動産の)第三取得者は、右被担保債権が消滅すれば抵当権が消滅し、これにより所有権を全うすることができる関係にあり、右消滅時効を援用することができないとすると、抵当権が実行されることによって不動産の所有権を失うという不利益を受けることがあり得るのに対し、後順位抵当権者が先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができるとした場合に受けうる利益は、右に説示したとおりのものに過ぎず、また、右の消滅時効を援用することができないとしても、目的不動産の価格から抵当権の従前の順位に応じて弁済を受けるという後順位抵当権者の地位が害されることはないのであって、後順位抵当権者と第三取得者とは、その置かれた地位が異なるというべきである。」

※時効の援用権者まとめ
(出典:判例六法、レジュメ。①~⑥は消滅時効、⑦は取得時効)
①保証人、連帯保証人
②物上保証人
③抵当不動産の第三取得者
④売買予約の仮登記がなされている不動産の第三取得者
 →売買予約に基づく所有権移転請求権保全仮登記のされた不動産につき、所有権を取得し、その登記を経由した者は、予約完結権の消滅時効を援用できる(最判平4.3.19)。
⑤売買予約の仮登記に後れる抵当権者
 →売買予約に基づく所有権移転請求権保全仮登記の経由された不動産につき抵当権の設定を受け、その登記を経由した者は、予約完結権の消滅時効を援用することができる(最判平4.3.19)。
⑥詐害行為の受益者
 →詐害行為の受益者は、詐害行為取消権を行使する債権者の債権について、時効の利益を直接に受ける者に当たり、その消滅時効を援用することができる。(最判平10.6.22)
⑦土地の取得時効につき、土地の賃借人。

※援用権がない者
後順位担保権者は先順位担保権者の債権の消滅時効を援用できない
②土地上の建物の賃借人は、その土地の取得時効を援用できない。

平成に入ってからの判例も多い。来年以降、近年中に再びこのあたりから出題されることもあるかも。注意。
  • 詐害行為の受益者は、詐害行為取消権を行使する債権者の債権が消滅すれば、詐害行為取消権の行使による利益喪失を逃れることができるので、その債権の消滅時効を援用することができる。(20-7-エ)
○ 何のことはない、上記の判例(最判平10.6.22)の通り、詐害行為の受益者は消滅時効を援用できる。
  • 建物の敷地所有権の帰属につき争いがある場合において、その敷地上の建物の賃借人は、建物の賃貸人が敷地所有権を時効取得すれば賃借権の喪失を免れることができるので、建物の賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することができる。(20-7-オ)
× 上記の通り、土地の賃借人であれば土地の取得時効を援用できるが、土地上の建物の賃借人は土地の取得時効を援用することはできない。
ちなみに、肢イは「物上保証人が消滅時効を援用できる」で答えは「○」、肢ウは「一般債権者が他の債権者の債権の消滅時効を援用することができる」で答えは「×」。

反省:「ウ」以外の4肢は、レジュメでばっちり載っていて、間違えた「エ」に至っては講義で木村先生が図を書いて説明してくださったところだった。ああ、これじゃ、宝の持ち腐れだ。がっつり覚えておこうと思う。上記のまとめの「援用権者」では、④、⑤、それから、⑦あたりは来年にでも出てもおかしくないかも。心しておけ、来年の私よ。

0 件のコメント: